地域ICTクラブ 指導者ガイド
日本こどもICTクラブ協会／発行日：2025年08月24日
本ガイドの位置づけ
全国の eスポーツ／プログラミング／ロボット等の地域ICTクラブが、子ども起点（Child-First）で安心・楽しく取り組めるように作られた共通ベースです。
市区町村や教育委員会のガイドに合わせて地域別パラメータを差し替えられる構成にしています。
目次
1. ミッションと原則
- 子ども起点 主体性・創造性・ウェルビーイングを最優先。
- 安全最優先 生命の安全 ＞ 競技・制作・イベント。
- 地域に根ざす 各自治体の基準・文化・資源に合わせて運用。
- 公開・共有 成果や学びを適切な同意のもとに共有。
2. 国・自治体の方針との整合
- GIGAスクール、学習指導要領の「個別最適×協働」、部活動の地域移行ガイドラインに整合。
- 国際フレーム（OECD Learning Compass／ISTE）も評価観点に接続。
3. 安全最優先（EAP：緊急対応計画）
3.1 最低限のEAP（テンプレ）
| 項目 | 内容（クラブで記入） |
|---|
| 責任者 | [氏名／連絡先] 副責任者：[ ] |
| 緊急連絡 | 119／110／保護者／施設管理者／教育委員会 |
| AED | 設置場所：[ ] 小児用パッド：有・無 点検日：[ ] |
| 救急相談 | #7119（実施地域なら）／医療機関：[ ] |
| 避難 | 集合場所（一次/二次）：[ ]/[ ] 避難経路図：掲示・配布 |
| 記録 | インシデント記録様式／写真ログ保存 |
3.2 AED・心肺蘇生の基本
- 反応・呼吸の確認 → 119通報とAED手配 → 胸骨圧迫 → AED装着 → 指示に従う。
- 小児は専用パッドを使用（在庫・期限を定期点検）。
3.3 熱中症対策（WBGT／アラート連動）
- 環境省の「熱中症（特別）警戒アラート」に連動して運営判断。
- WBGT基準（原則）：31以上＝運動中止／28–31＝厳重警戒（激しい運動中止）。
- 屋内でも空調・換気・休憩・水分・塩分補給を徹底。扇風機のみは不可。
3.4 感染症対策（学校保健安全法等に準拠）
- 学校感染症の出席停止基準に準拠。最新の自治体・学校通知を確認。
- 手指衛生／換気／症状のある参加者は参加見合わせ。
3.5 避難場所・避難ルート（地震・火災・風水害）
指定避難所・広域避難場所、一時集合場所、津波/浸水想定の有無を確認し、平面図・周辺図にルートを明示。
年1回以上、避難訓練を実施（地震/火災/風水害の少なくとも1種）。
| 項目 | 標準 | 地域版（記入） |
|---|
| 一次集合場所 | 施設前ひろば（安全確認できる場所） | |
| 二次集合場所 | 近隣公園/体育館 等 | |
| 指定避難所 | [自治体指定の名称] | |
| 避難ルート | 主要ルート/代替ルート（バリア回避） | |
| 災害別対応 | 地震：落下物回避／火災：煙逆走禁止／風水害：増水路回避 | |
| 津波・浸水 | 想定地域なら高台/上階へ | |
| 役割分担 | 先導・後衛・点呼・救護・連絡 | |
| 訓練頻度 | 年1回以上 | |
4. 学びのデザイン（STEAM×PBL×アクティブラーニング）
- 探究→制作→公開→振り返りの循環。UDL配慮で参加の多様性を確保。
- 表現手段：アプリ／ロボット／データ可視化／動画／プレゼン。
5. 運営（年間計画／同意／写真・作品）
- 同意書：参加・写真/動画・外部サービス（年齢規約準拠）。
- 写真は同意範囲のみに使用。クレジット・ライセンスを明確化。
5.3 撮影・記録の同意運用（拒否時の対応）
本人・保護者の同意の有無を厳格に尊重します。クラブは「最小限の個人情報」「限定的な公開範囲」を原則とし、同意の撤回にも対応します。
（1）申込時の同意項目（チェック式テンプレ）
- 対象：□写真 □動画 □音声 □作品画像
- 公開範囲：□クラブ内共有 □保護者限定配布 □協会Web □SNS □報道・受賞報告
- 表示情報：□本名 □イニシャル □ニックネーム □学年のみ □顔は不可
- 使用期間：□年度内 □期間限定（ ） □無期限（撤回可）
- 撤回方法：メール/フォームで申請 → 受理から48時間以内に自チャンネルは削除、第三者媒体は可能な限り依頼
（2）拒否時の運用（当日）
- 識別：名札/リストに「撮影不可」マーク。参加者への周知は配慮ある記号で。
- ゾーニング：「No Photo」席・待機ラインを設け、撮影者に明示。
- アナウンス：開始時に「撮影OK/NGの参加者がいます。NGの方は写しません」と周知。
- 編集での配慮：万一写り込みがあった場合はトリミング/モザイク/スタンプで特定不可にしてから公開。
（3）掲載前レビュー（4-eyes）
- 公開前に二重チェック：①同意範囲、②個人情報の写り込み、③位置情報/制服/名札の識別性。
- 公開媒体のログ（URL/公開日/担当）を残す。
6. ハラスメント防止方針（ゼロトレランス）
6.1 禁止行為（例示）
- 暴力・体罰・威圧・長時間拘束・侮辱・差別的言動。
- パワハラ／セクハラ／モラハラ／性暴力／いじめ／オンライン上の中傷。
- 成績・出場・評価を交換条件とする不当な要求。
- 行き過ぎた指導：怒鳴る、脅す、罰を課す、公開の場での過度な叱責 等。
6.2 予防（クラブの標準）
- 行動規範（Code of Conduct）の提示と同意。
- ツーマンルール（指導者2名体制）と面談は原則オープンスペース。
- オンライン環境：ボイス/テキストのログ保存、ミュート・キック基準を明示。
7. アクセス・移動安全（ルート／送迎／自転車）
※「通学路」は学校の用語。クラブでは推奨ルート/集合ルートとして整備・周知します。
7.1 基本方針
- 人命最優先。歩行者・自転車の安全を最優先。
- ヘルメットは努力義務（道路交通法）。クラブとして強く推奨し、入会時に周知。
7.2 送迎
- 安全に乗降できる指定エリアを案内（路上駐停車の抑制）。
- 周辺への迷惑駐車は避けるよう協力依頼。
7.3 徒歩・自転車（チェック）
| □ | 確認事項 |
|---|
| □ | 推奨ルート図を作成し、横断地点・薄暗所・工事箇所を明示。 |
| □ | 薄暮・夜間は反射材の装着を周知（自転車は後部反射材または尾灯）。 |
| □ | ブレーキ・ベル・ライト等の法定装備を点検。 |
| □ | ヘルメット着用を推奨（サイズ・あごひも・安全マーク）。 |
8. 感染症・学級閉鎖時の運用（開催可否／検温／返金・振替）
※本章は各自治体・学校の最新通知に合わせて地域差パラメータで運用します。
参考：出席停止は学校保健安全法に準拠。学級閉鎖の基準は自治体で異なります（例：欠席率15–20％等）。
8.1 開催可否の基本原則（テンプレ）
- 学校・自治体が学級/学年/学校閉鎖 → 当該学級・学年のクラブ活動は休止（同日オンラインまたは振替へ）。
- クラス内の感染・発熱による欠席率が基準超 → クラブ独自の休止基準で判断（例：参加予定者の15–20％以上）。
- 症状のある参加者は参加不可。家庭で当日朝セルフチェックを徹底。
8.2 セルフチェック（家庭向け）
- 前日または当日朝に検温・体調確認。平熱+1.0℃以上または37.5℃以上、強い咳・倦怠感がある場合は見合わせ。
- 個人情報は最小限（提出は「参加可否」のみ、数値は原則保存しない）。
8.3 開催判断の地域差パラメータ（記入）
| 項目 | クラブ標準 | 地域版（記入） |
|---|
| 学級閉鎖の扱い | 学校が閉鎖→当該学級の活動は休止 | |
| 休止の欠席率基準 | 参加予定者の15–20％以上で休止 | |
| 小規模クラス閾値 | 参加者20名以下：欠席3名を目安 | |
| 再開の判断 | 登校基準（学校保健安全法）に準拠 | |
| 検温運用 | 家庭で当日朝セルフチェック（数値提出は不要） | |
8.4 代替実施・振替・返金（テンプレ）
| 状況 | クラブ標準 | 地域版（選択/記入） |
|---|
| 主催側の休止（閉鎖/警報等） | 同週オンライン実施 or 同月内の振替開催 | |
| 参加者都合（体調不良等） | 同ターム内で1回まで振替（空き枠にて） | |
| 大会・発表会の延期 | 日程再調整。参加できない場合は記録提出で代替 | |
9. eスポーツ運営指針
- 目的：協働・戦略・コミュニケーションの学び。暴言・煽りの禁止を明文化。
- 年齢区分：レーティングを遵守し、保護者説明を行う。
- 時間・健康：プレイ時間・休憩・姿勢・ブルーライト対策。
10. 機材・環境（PC・ネット・アカウント）
10.1 端末スペック（目的別の目安）
| 用途 | 推奨スペック | 備考 |
|---|
| 入門（Scratch/MakeCode/タイピング） |
4コアCPU / メモリ8GB / SSD128GB / 内蔵GPU |
Webブラウザ中心。Chromebook/旧GIGA端末も可（速度要確認）。 |
| 標準（Python/Web/2D制作/軽い動画編集） |
6コアCPU / メモリ16GB / SSD256GB / 内蔵または入門GPU |
VS Code/Thonny等。USBヘッドセット/カメラで発表収録可。 |
| eスポーツ/3D/映像 |
8コア級CPU / メモリ16–32GB / SSD512GB / ミドルGPU / 有線LAN |
フレームレート安定と遅延対策を優先。冷却・電源容量も確認。 |
| ロボット/IoT/マイコン |
USB多数/BT/Wi‑Fi / 管理者権限が不要でも開発可能な構成 |
Arduino IDE、micro:bit、各種ドライバの事前配布・検証。 |
10.2 周辺機器・実習環境
- ヘッドセット（両耳・ノイズ低減）、Webカメラ、マウス、予備キーボード、電源タップ（個別スイッチ）。
- ディスプレイは可能なら23–27インチを共用に1–2台。プレゼン用に大型表示/プロジェクタ。
- 姿勢・視力配慮：机椅子の高さ調整、休憩ルール、ブルーライト対策は保護者と共有。
10.3 ネットワークと安全
- Wi‑Fi6/6E推奨。大会・配信時は有線LAN。アップデートは前日までに完了。
- コンテンツフィルタ/セーフサーチ、保護者・施設の方針に合わせたドメイン制御。
- 帯域確保（QoS）と冗長化（モバイル回線等のバックアップ）。
10.4 アカウントと権限
- 管理/指導/参加者のロール別アカウント。参加者端末は原則非管理者。
- パスワードは12桁以上＋MFAを基本（共用端末は自動サインアウト）。
- 氏名表示・ハンドルネームの方針（保護者同意）を運用章と整合。
10.5 ソフトウェア標準
- プログラミング：Python（VS Code/Thonny）、Scratch/MakeCode、Web（HTML/CSS/JS）。
- ロボティクス：Arduino IDE、micro:bit、Tinkercad Circuits 等。
- クリエイティブ：画像・音声編集の無償ツール、発表資料テンプレ。
- eスポーツ：年齢区分/CERO等の説明と保護者同意を前提に選定。
10.6 資産管理・貸出
- 資産台帳（機器ID/購入日/保証/状態）。記名シールとQR台帳。
- 貸出は保護者同意・返却期限・故障時の扱いを明文化。初期化手順を標準化。
10.7 セキュリティ・個人情報
- OS/アプリ更新、ウイルス対策、有効なファイアウォール、ディスク暗号化。
- 写真・動画・ログは最短保存を原則。退会時は即時削除。
11. 評価（ルーブリック／ポートフォリオ）
| 観点 | Lv1 | Lv2 | Lv3 | Lv4 |
|---|
| 課題発見 | 与えられた課題 | 身近な課題に気付く | 根拠をもって設定 | 社会と接続して設定 |
| 創造・制作 | 指示通り | 一部工夫 | 複数案→改善 | ユーザーテスト→高度改善 |
| 協働 | 役割不明確 | 役割分担あり | 相互支援あり | 自己調整できる |
| 発信 | 説明が不十分 | 構成あり | 根拠ある説明 | 相手に合わせ最適化 |
| 安全 | 理解が浅い | 遵守 | 場面判断 | 他者に助言 |
12. 地域差対応：差し替えパラメータ表
| 項目 | 標準 | 地域版（記入） |
|---|
| 熱中症アラート連動 | 特別警戒＝中止／警戒＝屋外中止・屋内軽運動＋休憩 | |
| WBGT閾値 | 31以上＝中止、28–31＝厳重警戒 | |
| 気温閾値（代替） | 35℃以上＝中止（WBGT計が無い場合の暫定） | |
| 落雷・荒天 | 雷注意報/警報で屋外中止、屋内は落雷対策 | |
| 感染症（出席停止） | 学校保健安全法の基準に準拠 | |
| AED | 設置場所・小児用パッドの有無・点検サイクル | |
| 救急相談 | #7119（実施地域）／最寄り救急 | |
| 避難系 | 一次/二次集合場所・指定避難所・避難ルート | |
| 推奨ルート | 年1回見直し（地図配布） | |
| 送迎 | 指定エリアでの安全な乗降 | |
| 自転車 | ヘルメットは努力義務（強く推奨） | |
| 自治体ガイド | 熱中症/感染症/安全管理/避難のURL | |
13. 参考資料（公式リンク）
| 項目 | 全国公式 |
|---|
| 熱中症警戒アラート | |
| WBGT/暑さ指数 | |
| #7119（救急相談） | |
| AED・救急 | |
| 避難・ハザード | |
| 感染症・学級閉鎖 | |
| 自転車・交通安全 | |
| 撮影・肖像権 | |